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見習い魔術師

見習い魔術師

     第七章

第七章

「それで、何が分かったんですか?」
十分に城から離れると、フィリルは口を開いた。
「それに、何故ヨシュアには聞かれない方がいいんですか?」
「ん~、別に構わないんだけど、ヨシュアは知らないでしょ?このこと・・・」
そのリースの気配りに、フィリルは表情を和ませた。
「そうですね、まだ知らない方が良いでしょう。ありがとう、リース」
フィリルの感謝の言葉に、リースは顔を少し赤らめた。
「それより、分かったことを教えてくれますか?」
本題に戻ると、リースは指折り言いはじめた。
「まず、男の大体の年齢。二十代後半じゃないかって聞いたわ。それと、旅の途中みたいな格好をしていたって。髪は金色。少し長めらしいわよ。あと、美青年って・・・」
話の途中で、フィリルが手で言葉を遮った。
「ちょっと待って下さい」
「どうしたの?フィリル。調子でも悪い?」
確かに、少し顔色が悪いようだ。
しかし、フィリルは首を横に振った。
「いえ、そうじゃないんです。ただ・・・」
「ただ?」
心配そうなリースの顔に、フィリルは苦笑して言った。
「なにか、すっごく嫌な予感がするんですよ・・・」
「ふぉっふぉっふぉっ。その予感、当たっておるかも知れんのぅ、フィリルよ」
頭上から降ってきた声に、2人は天上に見える木々の間を見つめた。
「森長・・・」
フィリルの呟くような声に、リースは、ばっと振り返った。
「え゛!?嘘っ!!この人が長老様!?」
酷く驚いたリースの声に、森長はふわりと二人のもとへ飛び降りた。
「ほぅ?何が嘘なのかね、リースよ」
そう言った森長の背丈は、50センチ程だろうか。長い年月を経てきたことを示すかのよ
うに、その顔には深いしわが刻まれている。その瞳には、優しさと厳格さがかね備わっており、全てを見透かすようなその瞳は、見る者に威圧感を感じさせる。豊な髪は白く、纏っている衣は鮮やかな木の葉の色を映し出しており、美しい刺繍が施されている。手には老いた木で作られたのであろう杖が握られている。高さは長の二倍ほどで、握りのところには、美しく大きな緑の石がはめ込まれている。
「だって、一族の長老様といえば!」
何故か意気込んでいるリースをみて、森長は微笑んだ。
「ほう。長老といえば、なんじゃ?」
楽しそうに訊ねる長に、フィリルはため息をついた。
しかしリースは、そんな事に気付くはずもなく、力強く言い放った。
「美形の若い好青年って決まっているでしょう!!」
その強い思い込みに、フィリルは頭痛を覚えた。
しかしながら、長の方は大声で豪快に笑い出した。
「な、なにがおかしいのよ!!」
リースもリースで、長に対してすでに普段のように口を利いている。
「ふぉっふぉっふぉっ!!なるほどのう、若い美形か。とすると・・・」
突然森長の姿が消えた。そこには、森長ではなく、若い男。
「こんな感じかな?リース」
生意気そうに口を利く青年は、たしかに好青年。若く、どう見ても二十代だろう。髪は短
い金髪だが、緑が霞んで見える。リースの注文通りの姿だ。しかし。
「う~ん、いいんだけど、イマイチねぇ。髪は長いほうが良かったかしら?」
などと、偉そうに文句を並べ立てている。
フィリルはというと、もうどうにでもなれというように、諦めたため息をついていた。
「ったく。ラスライ様に贅沢言うなよなー。感謝しろよ、ここまでやってやったんだから」
長の言葉に、リースは腕を組んだ。
「ま、さっきよりいっか。名前、ラスライなの?じゃ、呼び捨てでいいわね」
ラスライが口を開く前に、フィリルが割って入った。
「はい、はい。もうお終い!それで、ラスライ。さっきの事ですが・・・」
「ああ」
フィリルの言いたい事を察して、ラスライは悪戯でもしたかのように意地悪く笑った。
「フィリルの当たり。来客者はハーメルだよ」



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